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1. 舞台復活までの歩み– 半世紀ぶりに蘇った伝統文化 –

目次

1.1「西塩子の回り舞台」とその特徴

「西塩子の回り舞台」(茨城県有形民俗文化財指定)は、茨城県の山里で江戸時代から受け継がれてきた、「江戸時代後期の道具も残る組立式の農村歌舞伎舞台」です。「組立式・仮設型」で、地域住民が毎回組み立てては解体する点が最大の特徴です。地域住民総出で丸太と竹を組み立て、畑に一夜限りの大舞台が出現します。終演後は全て解体し、翌年また新たに造り替える――この「儚さ」と「再生」のリズムこそが、200年続く伝統の核心です。

特徴西塩子の回り舞台他地域の農村舞台
構造組立式・仮設型(毎回組み立てて解体)常設型(舞台として恒久設置)
素材地元の竹・丸太・縄を使用、釘を使わない木造
設置場所畑や空き地など屋外に仮設社寺の境内など
西塩子の回り舞台の特徴

 江戸時代後期より、地元や近在の人々によって永きにわたって伝え親しまれてきた西塩子の回り舞台は、昭和20年(1945年)以来、組み立ては行われなくなりました。以来、その風習は途切れ、数多くの貴重な道具も倉に納められたまま忘れ去られようとしていました。

舞台調査時の様子。舞台上手背面より花道の方向を見る/平成4年1月
舞台調査時の様子。舞台上手背面より花道の方向を見る
/平成4年1月

1.2 舞台復元に立ち上がった西塩子の住民

  そんな中、平成3年度に大宮町歴史民俗資料館(当時)が調査を実施。「西塩子の回り舞台」が非常に貴重な文化財であることを再認識することとなりました。これをきっかけに、平成6年(1994年)にはなんと西塩子区全世帯70戸が会員となり、「舞台の復元」と「組立方法の習得・伝承」を目標に掲げた「西塩子の回り舞台保存会」が設立されたのです。

舞台組立作業一日の作業を終えての親睦会の様子/平成13年

  ところが、組立てを行っていた世代の人々はすでに世を去り、手順や方法は全くの手探り状態。その上、経費や労働の負担をどうするかで会議はいつも紛糾し、「なぜ自分たちが今さら歌舞伎舞台なんか復活しなければならないのか」と、舞台組立ての実現は何度も暗礁に乗り上げました。

  そんな中、東京都あきる野市の菅生組立舞台保存会の協力で、実際の組立ての様子を見学できる機会を得たり、全国地芝居サミットに参加して他地域の地芝居関係者と交流を深めたりするうちに、住民の意識に変化が生まれました。「子どもたちや私たち自身が誇れるふるさとを残したい」「先祖が遺してくれた回り舞台を復活させ、地域再生につなげたい」――そんな思いが広がっていったのです。

1.3 半世紀ぶりに復活した舞台

 調査開始から5年後の平成9年(1997年)10月、試行錯誤を重ねて「西塩子の回り舞台」は約50年ぶりに復元されました。たった2時間の公演にもかかわらず、3,000人もの観客が詰めかける盛況ぶりでした。翌年秋には「完全復活」として再び舞台を組み立て、第9回全国地芝居サミットも同時開催。全国から集まった地芝居関係者に、美しい組立式舞台を披露することができました。

 こうして、舞台の復元と地芝居公演は、原則3年に1度の頻度で舞台を上演するまでとなりました。これまでの活動は多くの方々から高く評価され、、06年には「サントリー地域文化賞」を、08年には第1回ティファニー財団「伝統文化振興賞」を受賞。これもひとえに、皆さまのご指導とご協力のおかげです。心より感謝申し上げます。

1.4 復活を支えたボランティア

 西塩子は、少子高齢化が進み、復活当時は戸数が70まで減少した小さな集落でした。平成9年の舞台組立以来、保存会では「西塩子のみで舞台を保存・伝承していくのは将来的に困難である」と判断しました。

組み立ての手伝いをするボランティア。/平成15年

 そこで翌年からは、他地域にも舞台組立の援助を呼びかけ、平成13年からはさらに広範囲にボランティアを募ってきました。その成果が実り、舞台組立はもちろん、舞台道具や衣裳の製作、公演当日の着付けや舞台転換まで、平成18年には70名を超える大勢のボランティアにご協力いただけるようになりました。

 舞台の保存・伝承は、ボランティアの力なくしては成し得ません。地域の枠を越えて集まってくださったボランティアの皆さん一人ひとりの熱意と支えこそが、私たちの舞台を未来へとつなぐ原動力となっています。心からの感謝とともに、これからもその思いの輪を広めていきたいと思う次第です。

伐った竹を運び出すボランティア/平成18年

1.5 保存会のあゆみ

・大宮町歴史民俗資料館による舞台調査(~1992.1月)
・西塩子の回り舞台保存会結成
・「西塩子の回り舞台」町有形民俗文化財指定
・東京都あきる野市「菅生の舞台」組立見学
・全国地芝居サミットに参加(長野県東御市)
・町に活動計画書と補助金申請書提出
・組立および公演に向けて保存会始動
・木材・竹伐り出し、舞台組立(9月~)
・復元記念公演(10月下旬)
・舞台解体(11月)
・復活記念公演・第9回全国地芝居サミット(10月下旬)
・西若座 結成・出演
・茨城県有形民俗文化財に指定
・舞台組立ボランティア募集
・第1回定期公演開催(10月下旬)
・塩田小学校子ども歌舞伎参加
・文化庁ふるさと文化再興事業に採択(~2003)
・義太夫・常磐津・地芝居伝承教室実施
・舞台道具整備、平成の大幕作り開始
・「茨城県郷土民俗芸能の集い」に子ども歌舞伎出演
・義太夫・常磐津・地芝居伝承教室実施
・舞台道具整備、舞台組立伝承教室開催
・第2回定期公演開催(10月下旬)
・「ふるさと文化子どもまつりin東海」に子ども歌舞伎出演
・第3回村の伝統文化顕彰 農水大臣賞受賞
・第8回ふるさとイベント大賞 大賞受賞
・東日本鉄道文化財団地方文化事業支援に採択(~18年)
・5町村合併して常陸大宮市となる(10/6)
・高円宮妃 子ども歌舞伎ご視察
・「ふるさと歌舞伎フェスティバル(NHKホール)」に子ども歌舞伎出演(2月)
・東京駅丸の内北口ドーム「まるきた伝統空間」に西若座出演(9月)
・第28回サントリー地域文化賞受賞
・「第18回全国生涯学習フェスティバルまなびピアいばらき」開会式に子ども歌舞伎出演(10月上旬)
・第3回定期公演開催(10月下旬)、平成の大幕完成
・いばらきイメージアップ大賞奨励賞受賞
・「茨城県郷土民俗芸能の集い」に子ども歌舞伎出演
・「子ども民俗芸能交流会」(於桜川市)に子ども歌舞伎出演
・第1回ティファニー財団伝統文化」振興賞受賞
・「第23回国民文化祭いばらき2008」西塩子の回り舞台で開会式のサテライト会場および地芝居公演開催(11月上旬)
・茨城大学工学部の学生諸君による、西塩子の回り舞台保存会の公式HP制作
・第5回定期公演開催(10月中旬)

西塩子の回り舞台「常陸大宮市常陸風土記1300年記念芸能公演」、「茨城県郷土民俗芸能の集い」(子ども歌舞伎出演)の会場となる※舞台貸出しの始まり

・第6回定期公演開催(10月中旬)

西塩子の回り舞台「茨城県郷土民俗芸能の集い」(子ども歌舞伎出演)、「ウダーベ音楽祭」(市民による市域小・中校歌の合唱祭)の会場となる

・第7回定期公演、令和元年東日本台風で舞台被災するも順延して開催(10月中旬)

西塩子の回り舞台「茨城県郷土民俗芸能の集い」(子ども歌舞伎出演)の会場となる

・第8回定期公演予定(10/25)
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