茨城新聞「いばらき春秋」に取り上げられました

映画「国宝」は歌舞伎が題材だ。伝統を重んじる家系において役者の愛憎劇が入り交じる。からっとした後味や、道具衣装の美しさも花を添える。原作小説や歌舞伎の人気も高まったこちらも伝統の一端を担う。常陸大宮市西塩子地区に伝わる農村歌舞伎舞台「西塩子の回り舞台」が、6年ぶりに開かれる。県指定文化財で、組み立て式舞台は今あるものでは日本最古という。400年ほど前に出雲国で始まった歌舞伎は、形を変えながら人々に愛された。江戸後期の文化・文政年間から明治・大正までの1世紀の間、全国に2千棟もの舞台が築かれた。県内でも多くの歌舞伎や人形芝居が演じられてきた。同市の歴史民俗資料館によると、莫大な費用がかかることから、当時の藩からは「村内衰微の元」とされ、祭礼での上演が禁じられたり、関係者に厳しい裁定が下されたりすることもあったそうだ。来場する観客の祝儀も当てにされた。脈々と受け継がれる大衆芸能だが、地域は高齢化に伴い存続の危機に向き合う。NPOやクラウドファンディングの支援も受け、続ける方法を探っている。回り舞台の本番は25日。映画の余勢を駆って地域に目を向ける人が増えてくれればいい。(綿)


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